アシュヴィニー支配星にケートゥが来る意味
世界は混沌(カオス)から生まれた、と語ったのは、ギリシアの詩人、ヘーシオドスですが、インド占星術のナクシャトラの中にも、同様の世界観を感じ取れます。
インド哲学には輪廻転生がベースとなっており、世界は創造、維持、破壊のパターンを繰り返しながら成り立っていると考えられています。その破壊から創造までの混沌とした空間を彷徨っているのが、ケートゥであり、12星座・27ナクシャトラのトップバッターの支配星であります。
ナクシャトラ最後を飾る魚座レヴァティー・ナクシャトラを経験したことによって、一つの世界は完全に終わりを迎えました。新しい世界の幕開けとして、勇気に満ち溢れる火星を支配星とする牡羊座が一番最初に来ることで、新たな試みへの意気込みを感じられますが、そう簡単に新たな世界が確立されるはずはありません。安定した世界を作り上げるまでは、試行錯誤の繰り返しです。そんなプロローグの意味合いを込めて、アシュヴィニー支配星は、過去を引きずっているケートゥになります。
頭がなく、欲もないケートゥは、諸刃の剣です。気合いと根性の、牡羊座支配星・火星と一緒になることで、最初に海に飛び込むペンギンとして、向こう見ずに新たな世界を切り開いてくれるのですが、そのやり方に見境がありません。何しろ、過去を引きずるケートゥさんなので、そんなガムシャラな姿でも、前に進んでいるのではなく、自滅に向かっているのではないか?と周囲の人はヒヤヒヤして見ている可能性もあります。
映画で見るアシュヴィニー・ナクシャトラ
『バットマン』(クリストファー・ノーラン監督シリーズ・ヴァージョン)
DCコミックスの『バットマン』の主人公は、ゴッサム・シティを悪の手から守るヒーローです。悪をやっつけるためならば、暴力も辞さず、法も犯します。そんなバッドマンをジョーカーは、コインの面と裏のような関係だと感じて、バットマンを悪の道に引きずり込もうと必死です。映画『ダークナイト』でジョーカーを演じたヒース・レジャーの太陽は魚座レヴァティーにあり、一方のバットマン演じたクリスチャン・ベールの月はアシュウィニーにあります。バットマンはヒーローであるものの、道を踏み外す危うさが常に付きまとっています。
『スター・ウォーズ』
映画『スター・ウォーズ』シリーズで、物語の鍵を握る若きアナキン・スカイウォーカーは、「フォースにバランスをもたらす者(=世界に秩序をもたらす者)」と予言されていましたが、一度はダークサイド(悪の道)に転落し、ダース・ベイダーとして、大量虐殺に関与し、宇宙を恐怖で支配しました。アナキンの師匠オビ=ワンも心底ガッカリです。
アナキンがダース・ベイダーになったのは、愛する人を失ったという過去への執着と、一方的で短気な考えから生じた誤解によるものであり、まさに火星とケートゥのコンビネーションであるアシュウィニーのなす技だと思います。(実際に、若きアナキンを演じた俳優ヘイデン・クリステンセンは、太陽・金星・火星がアシュウィニー。)
しかし、最終的には、自分の息子ルーク・スカイウォーカーを守るため、自分の悪の師匠ダース・シディアスを倒し、暗黒の支配を終わらせ、“選ばれしもの”としての使命を果たし、見事、アンチヒーローからヒーローへ返り咲きました。ある意味、恐怖や暴力や混沌は、アナキンの成長のために、世界の発展のために、必要不可欠だったのかもしれません。
アシュヴィニーと馬の関り
混沌とは、世界が統一される前に、人々が戦い合っている状況のことを指す場合もあると思いますが、そういう意味では、アシュウィニーは、戦国時代にまつわるものと関連しています。戦闘に使う馬や剣、銃。今の時代に馬は戦闘に使われないですが、ケートゥは昔気質なので、馬は必修です。そんな名残から、平時に生きる人たちでも、乗馬や競馬が好きだったり、剣道や武術を含めるスポーツに興味があったり、戦闘ものに興奮するアシュウィニーさんたちが多いです。また、カオスな状況に立ち向かうという意味で、現代の職業であれば、警察官とか消防官に通じる点があります。
アシュウィニーは、人類の生き残りを懸けて、時々突拍子のない方向に逸れながらも、間違いなく安定した世界の土台を少しずつ固めていってくれる存在であり、勇気あるヒーローであるのです。