Amazon Primeにて無料視聴できる(2024/1現時点)映画『Saltburn』がとんでもなく面白く、かつインド占星術の観点からも解釈しがいがあるため、今回紹介。
金星が強い映画監督エメラルド・フェネル
『Saltburn』を手掛けたのは、性加害者への復讐劇を描いた『プロミシング・ヤング・ウーマン』(以下、『P.Y.W』)で脚本・監督を務めたエメラルド・フェネル。アセンダントは名監督が多く持つバラニー・ナクシャトラ/牡羊座。1室支配星の火星は金星と共に、プルヴァ・ファルグーニー・ナクシャトラ (以下、Pファル)/獅子座に在住。どちらのナクシャトラも支配星は金星で、フェネル氏は金星が強い人物だと言えます。
『Saltburn』は『P.Y.W』同様、セットや衣装、さらにはタイトルの書体まで凝っていて、終始Pファルのこだわりあるセンスが漂っています。"センスが良い"と書きかけたものの、Pファルは美を追求しすぎて、一般人からは悪趣味と見られる傾向にあるので、やめました笑
実際『Saltburn』でもグロテスク・退廃的・デカダンスな美に走っています。映画の舞台は2006年7月ですが、平凡な主人公が嫉妬する裕福なイケメン男子の邸宅はさらに過去の遺物と化して、「貴族時代ですか?」というほどです。監督によると、ルネサンス前の時代ゴシック調とのこと。Pファル含め獅子座全体的に、過去の復興に情熱を持つ傾向にあります。
金星の闇
『Saltburn』の前半ではスクールカーストの様が描かれ、学校での人間関係に馴染めなかった人たちは主人公のオリバーに共感かつ、映画を見ていて辛くなっただろうと思います。
『愛と芸術』を司る金星がなぜ排他的でイジメにも加担してしまうのか、インド占星術(の背景にあるインド神話)では説明がつきます。金星支配のナクシャトラは全て、階級/カースト制度に関わり、『血統』で結ばれた団体にこだわります。そして、その団体にそぐわないものは容赦なく排除します。「周りから穢されたくない」「清潔な自分でいたい」というハリーポッターのスリザリン的考えがどこかにあります。
金星は最も輝きが強い星として目立ちますが、それは外見の美しさ/成功にこだわる=他者との競争の中で勝ち抜く=自分よりも下の存在が必要、となります。現代の日本で特に推奨される自己肯定感や自己需要とは真逆を行きます。オンリー・ワンよりもナンバー・ワンが大事な金星にとってゴールのための手段は問いません。目的のためならば、どんな犠牲も払います。その犠牲は自己だけではなく、他者に及ぶこともあります。
なぜ死が必要なのか
『Saltburn』後半では血生臭いシーンがあったり、『P.Y.W』同様、結末は殺人で終わったりと、過激かつ極端であります。
なぜあえて死ぬ必要があるのか?インド思想的には、肉体の死は次生まれ変わるための通過点でしかありません。生まれ変わっても前世の経験がリセットされるわけではなくても、人生の経験値上におけるバージョンアップはできます。もし今世において"どうしても解消できない何か"があれば、死をもって、来世で"やり残した仕事"に取り掛かる必要が出てきます。
しかし多くの人は生まれ変わった時、"やり残した仕事"を放棄したいため、都合よく前世の記憶を忘れます。しかし記憶は頭ではなく、体に宿ります。(それゆえ、肉体が必要で、金星は肉体にこだわる。)体の不調を感じる時、似た出来事が何回も繰り返し発生する時、それは自分が覚えていない過去からのメッセージだと捉えて向き合うべきです。
過去にしがみつくケートゥとは違い、金星は現在〜未来に前進していく惑星です。ケートゥ同様、金星は過去と向き合いますが、それは"やり残した仕事"を完了して過去と決別し、今を生きるためです。過去との決別もメタファーとして死を意味します。
こういった意味で金星は死を意識しますが、特に『生と死』にこだわるのはバラニー・ナクシャトラです。かつて、バラニーは全てに終わりを告げる最後のナクシャトラだとされていた時代がありました。『Saltburn』監督が、アセンダント・月・ラーフをバラニーに持つ点は非常に納得です。
次記事では、金星の的は誰なのか?『Saltburn』主人公を演じた俳優バリー・コーガンに焦点を当てて解説していきます。
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