前回の記事では、エメラルド・フェネル監督による映画『Saltburn』で描かれる、金星の闇にフォーカスしました。
今回は、『Saltburn』で主人公オリバーを演じた俳優バリー・コーガンに焦点を当てて解説。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』(以下『P.Y.W』)同様、終始金星(特にプルヴァ・ファルグーニー・ナクシャトラ)の煌びやかな雰囲気が漂う『Saltburn』も、ストーリー後半は、どんどんラーフ的な流れに突入・・・それは間違いなく、バリー・コーガンの存在感のおかげだとも言えそう。『Saltburn』の展開は、同じくバリーが金持ちに復讐するアンチヒーローを演じた映画『聖なる鹿殺し』の展開と被ります。
バリー・コーガン節炸裂!?の『Saltburn』
バリーの出生時間は不明ですが、月の位置はおそらくラーフ支配星のアールドラー・ナクシャトラ/双子座。アールドラーには、キモい行為をした想像の神ブラフマーに怒り狂って、彼の頭を刈り取った破壊と再生の神シヴァの逸話が関わっており、不正や堕落には容赦ありません。徹底的に制裁を加えようとします。(詳しくは、解説動画にて。)『Saltburn』主人公は"結果的に"、上っ面だけで生きて、娯楽に耽り現実離れした斜陽気味の貴族家庭を崩壊させます。
"結果的に"と書いたのは、異端児ラーフ的な『Saltburn』主人公が金持ち家族に近づいた本当の理由は、彼らの生き方に一石を投じるためではなく、彼らに仲間の一員として認められたかったから、であるはず。
この『Saltburn』が海外SNS上で話題になった理由の1つとなる衝撃的なシーン。主人公は、憧れの超イケメン金持ち同級生フェリックスが、バスタブのお湯に浸かって自慰行為に耽るのを目撃。その後、自分がそのバスタブを使う際に、フェリックスの精液が残るお湯を飲みます。(Pファルグーニー監督の行き過ぎたセンスに拍手!)
このシーンは、インド神話における、不老不死のお酒を飲んで神々の仲間入りしようとしたヘビの逸話を彷彿とさせます。異端児とされたヘビはお酒を飲むのに成功した直後、維持神ヴィシュヌによって罰として二つ裂きにされてしまい、ラーフとケートゥに分かれたのでした。(詳しくは、『インド占星術初心者向けコース』にて。)
フェリックスの精液を飲んで自分も神聖なものになろうとする『Saltburn』主人公。雲の上の存在から認められるために、道化になってでも周りに溶け込もうと頑張るラーフの姿に同情を覚えます。
映画が世間の注目を集めたシーンその2。自分でフェリックスを殺害したくせに、いざ彼の墓場を目の前にすると喪失感でいっぱいの主人公は、なんと土の下に埋められた死体相手に擬似セックスを行います。主人公が墓場に跪いた瞬間にこの展開を予想したのは、私だけではないはず。(予想可能な想定外シーンに体を張った俳優バリーへ敬意!)
この異常なシーンは、『悪徳さえも美徳』と豪語するPファルグーニーの悪趣味や、生と死を一体視するバラニーの特徴を表しているのかもしれません。しかし、それ以上に私の頭に浮かんだのは、Pファルグーニーの真反対に位置する、水瓶座〜魚座に係るプルヴァ・バドラパダ。バリーの出生時間は不明のため、アセンダントも不明ですが、Pバドラパダをアセンダントに持つ可能性が高いです。
Pバドラパダについてはまた詳しく解説したいですが、このナクシャトラに関連づけられる職業は例えば以下の通りです。(※極端な職業を抜粋)
葬儀屋、その他死に関連する仕事ならなんでも、外科医、黒魔術師
神話的メタファーとナクシャトラ
『Saltburn』は西洋的映画であるため、もちろん西洋思想/神話的要素が背景にあるのは間違いないですが、結局西洋も東洋も繋がっているからか、インド神話からの解釈が大いに可能です。
主人公がフェリックスたちと過ごした、夢のような真夏の日々も悪夢に変わったあるパーティーにて。皆が派手な仮装な出立をする中、主人公は雄鹿のカチューシャをして参加します。鹿はどの地域の神話にも登場します。神秘的、獲物の対象(=被害者)、好奇心旺盛(=知りたがり)、不安症、などの意味を持ちます。
鹿を動物シンボルとして持つナクシャトラは、蠍座に係るアヌラーダーとジェーシュター。どちらも執着心・嫉妬心・洞察力が強いです。そして、バリーは実際に金星をアヌラーダーに、ラーフをジェーシュターに持ちます。
その他、印象的なシーンだったのが、主人公が浅はかすぎる金持ちの生活に嫌気をさして、正気を保つためか、あるいは嘘まみれの生活を壊したい衝動によって鏡を割るシーン。(しかし、その翌日には、鏡は元通りに。)"虚構"で思い浮かべるのは、これまた鹿と大いに関係がある牡牛座〜双子座に係るムリガシラ・ナクシャトラ。バリーはケートゥをムリガシラに持ちます。
フットワーク軽い風のサインと言われる双子座は実は、蠍座のようなウェットさを隠し持ちます。しかし、虚構から現実に向かうための道を彷徨い続けます。詳しくは、こちらの記事にて。
まとめ
とにかく俳優バリー・コーガンが持つナクシャトラのシンボル要素がこれでもかと映画内に登場し、インド占星術の勉強の題材としても非常に素晴らしいです。ぜひ、胸糞悪くなるほど『Saltburn』を何度も繰り返し観てください笑
インド占星術の基本を学ぶには:
ナクシャトラを深く知るには: