神話を生み、語り継ぐ吟遊詩人
今世に産み落とされたその瞬間から人生の旅は牡羊座アシュヴィニーに始まり、あらゆる経験を経て、遂に今世の終わりを迎える魚座までやって来ました。
ウッタラ・バードラパダ(Uバードラパダ)と1つ前のナクシャトラ、プルヴァ・バードラパダ(Pバードラパダ)はセットのナクシャトラとなり、どちらも遺体安置台をシンボルに持ちます。
プルヴァは先、ウッタラは後という意味なので、Pバードラパダは人が死ぬ間際を、Uバードラパダは死んだ瞬間を切り取ります。
ちなみにUバードラパダの次に来るレヴァティーは死後の世界で最後の審判を受ける瞬間だと私は考えます。
人は失ったものを美化する傾向にあります。死者を悪くいうのは罰当たりだとも言われます。死後時が経つにつれ、生きていた時に起こった事実は忘れ去られるか、誇張され英雄化されます。
さらに時が経つと伝説化され、やがては神話に登場する人物となります。そしてこの神話を語り継ぐのがUバードラパダです。
ウッタラ・バードラパダを持つ有名人
実は筆者も月にUバドラパダを持ち、そこそこ神話は好きな方です。それでたまたま発見したのですが、なんと『スター・ウォーズ』を生み出したジョージ・ルーカス監督に多大なインスピレーションを与えた神話学者ジョゼフ・キャンベルが正真正銘のUバードラパダ人物でした。
ジョゼフ・キャンベル(1904-1987)
1900年代を生きたキャンベル教授は『千の顔をもつ英雄』の著作で有名。上流中産階級アイリッシュ系アメリカ人の家庭に産まれながら、幼い頃からネイティブアメリカンの文化・神話に興味を持つ。以来、膨大な世界各地の神話を収集・分析し、英雄神話には一貫したパターンがあることを発見。現代では敬遠されがちな神話を人々に分かりやすく噛み砕いて説明した。また、サンスクリット語や古フランス語を習得したりと、語学の才能も持ち合わせていた。キャンベル教授は木星・水星・太陽・ケートゥの4つをUバドラパダにお持ちです。
木星と太陽は真実性を持ち、水星は学んだことを伝える役割を果たし、ケートゥは過去生を示すので、彼の神話に対する貢献は天性から来るものだったに違いありません。
インド占星術で使う9つの惑星のうち、4つが同じナクシャトラにあるので、上記で書いた彼の特徴全てがUバードラパダに関連すると言ってもいいでしょう。
キャンベル氏は神話の研究者でありましたが、研究の中で自分なりの哲学を発見し、彼自身が後世神話の一部になり得る存在となったのです。
もう一人、Uバドラパダが強い有名人は、映画『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』等で知られ熱狂的なコアなファンを持つクエンティン・タランティーノ監督です。彼も木星・水星・太陽をUバドラパダにお持ちです。
彼の映画は主人公ではない人物にスポットを当てたり、脇役にストーリーに関係なさそうな意味のない話をさせたりするのが特徴です。
全ての人に物語が存在するとちゃんと理解しているのが、Uバードラパダです。死の床に着いてようやく、何気ない日常がどんなに特別だったのか人は気づきます。
タランティーノは映画オタクとして、自分が影響を受けた映画の設定や登場した役者を自分の映画にモチーフすることでも有名ですが、これはキャンベル氏と同様、Uバードラパダの編集して語り継ぐ力を表しています。
人物例を見た通り、吟遊詩人のように語り継ぐ力、ただの人間を特別な存在に昇華する力を持つのがUバードラパダだと思いました。
また、Kindle本『邪道インド占星術』も一緒にいかがでしょうか?